爛柯堂基話序爛柯堂棊話序才遠於棊者固不可話棊矣遠於文者亦不可話基矣必也棊之與文合子一手而後始可話而已恭惟我烈祖延名匠算砂於當時爾來執伎進者相繼輩出本因坊及林井安有四名家之目以此樹門戶者肩項相接馴致弘化嘉永之盛入品者二百餘人光前古〓後代實爲斯道之洪關焉顧其人於某則近矣但其遠於文是以手能談之而筆不能話之若夫近於文而遠於某也則筆能話之而手不能談之難矣哉某之與文合于一手也是所以有待於吾爛柯林翁歟翁爲以四名家之員技已入上品旁嗜文辭頃萃我邦典故係棊者編爲若干卷名曰爛柯堂基話携示索序余受而讀之抑其容與閑易柔能制剛者吉備和氣數公之棊也詭譎多計狡焉啓封彊者北條足利諸雄之棊也入而爲神沒而爲鬼變幻飄忽不可控揣者織田豐臣二公之基也一征一伐撥其騷亂而反諸至正不假詐力而歸大一統者不問而可見爲我眞人之棊矣方罫之間而氣象萬千可以觀人矣可以觀世矣可以觀治忽興亡矣話之爲用豈可以區々小數〓之哉不唯不可以小數槩識者將有深取於經世之妙機矣此非洞見人事世變於局上而筆能話之者安能如此哉宜矣其難也洵哉其話之有待於吾翁也嘉永二年歲次己酉端月笛浦野田逸撰凡例一本書は我が家十一世の祖元美君の遺著にして定稿とは謂ひ難きも其の名風に世に知られたるものなれば書肆の切望により版行を許すに至れり一篇中の二三條は故ありて之を除きぬ其の他行文用字勗めて原文に從ひ敢て妄に改竄することなかりしも假名遣ひ等より明かに其の誤寫たるを推知するに足るものは間々之を改めたるもあり又口を塡めたるは字體不明なるか或は闘けたるものなり一事を記するに首めに題目を揭げたるもあり或は之なきもあるは未定稿なればなるべし斯は皆補ひて體例を一樣ならしめ且卷首に目次を添へたり覽者の索引にも便なるべきを思ふてなり一某處に本書の定稿本なるものを藏置せる由を聞きたることあれど甚だ疑はし原書に『拜借濟』などいふ附箋の其の儘殘れるより見れば其の所謂定稿本なるものは蓋し借覽者の謄寫せしものなどにはあらずやと思はる一本書曩に曾て某新聞社の需により其の新聞紙上に揭載されたることありしが取捨添刪を加へられたるも少からず彼を讀みたる人の此を觀んには或は怪訝の念を起すもあらんか廬山の眞面目は今始めて全く露はるゝなれば覽者幸に之を諒とせられよ一本書發刊に關し原稿の整理校正等に就ては專ら知人笠井竹南君を煩したり玆に附記して聊か其の勞を謝するの意を表す大正三年十月十七日遠孫林きく識す爛柯堂基話凡例遠孫林きく識す