十四我れの開戰に有利なるを察すればなり、悲ひかな皇國の國力は實に今日の軍備を永久に保續するを許さず、況んや露國の日進月步せる東方の設備に對照比肩して、順次に我か軍備を擴張するをや、過去明治三十二三年以降、今日以前に至るの間に於ける對露軍備は、其對抗優劣の數多く我れに利なりしなり、然るに露國が南下の針路は少しも之れを弛めず、長征我れに迫まるの勢.一日は一日より急にして、今日に至り諸般の設備旣に我れを凌かんとす、倫し其れ諸公が、這の滿州問題の下に於て大機を逸せんか、彼れの軍備は俄かに增進し勝算を未前に決する能はさるに至るなり、諸公夫れ深思熟考せよ、露國が過去の手段は、常に勝ち難きの兵を以て、戰はさるの戰を挑み能く勝を收めて其地を奪ひ、傲然として我れに迫りしにあらすや、爾後露國が優に必勝の軍備を立て而して、彈丸の戰を挑み我れに迫るに至らは、皇國百年の事素より期すべからさらん刻刻露國が戰を避けて滿州の橫奪を永久ならしめんとするは、今日の開戰に不利にして明日の開戰に有利なるが故なり、想ふに彼れの今日戰を避くるは勝を大局に收め半球を席捲するの志あると、尙し滿州に於て一敗せは、歐露の內治又た復すべからさるに至るを知るが爲めなり、歐露内國の事情如何は、諸公素より能く之れを知らん其經濟の基礎太た鞏固ならさるに加へ、其東方經營に費やす處極て多く、歐露人口九千四百萬の負擔は年々增進し、而して彼れの鐵道侵畧策の反面には稍や文明の事物を輸し來り、官吏の橫暴と、兵役の煩苛、貿易の亂調は、盡く退守の露國を安全ならしめ難く、加之ならす虚無黨、無政府黨は危激なる禍胎を藏し、ニコラス帝家萬歲聲裡屢ば乾坤の破碎を夢みしめ、客民の大數十五