三十八◎◎日の勝必ず露人にあり、露人伐たさるべからす、露人伐たずんは我が國權何を以て立たん、露人伐たさるべからす、露人伐たずんは地利民和を捐つるなり、露人伐たさるべからず露人伐たずんは我民力國力共に彈くるなり、嗚呼我れは露人に對し平和の論抗を要せさる也、露人に對する平和は、我國敗亡の素◎内を寄くものなり、論首往々にして云ふ一國を兵の動かす素と容易ならず、世界の文明は常に平和の進步を望めり國民の勇氣を戰爭に濫用するは、世界に向て不信を賣るなり況んや我國は世界に向て好戰國の名を搏せり、玆に又た露に戰を挑む、更に世界の列國に不信を重ねて、一國の經濟と隣交の和親を破り、大に國力の發達を防けん、戰爭は實に世界列國の輿論に抗するもの也、東洋の一孤島を以て世界の與論に抗するは、遂に百年の大計を誤る者なり、如かす徐ろに平和を以て、東洋の頽勢を挽囘すること、今諸公の事每に英國の指顧を待ち、米國の意向を窺ふもの、或は竝に憚る所なきには非さるか、諸公夫れ惑ふ事勿れ、世界の文明は實に平和の進步を望めり、平和の進步を望むが故に列邦の兵備は均勢の上に戰を避けつゝあり、强者は之れを失ふを恐るゝが故に平和を言ふて弱者をして遂に起たしめさるを策せり、我國我民族と東洋の敗亡を平和言下に甘受せは、國家は一艦を浮へ一兵を養ふを須ず、我徒は文明を歡呼して平和に降伏し、我が子孫をして露人の使役者たらしむるに忍ひさるが故に直に戰端を開かさるからずと云ふ者也、世界の輿論は決して弱者に賛同せず、好戰と非戰とは世界の論評に任せて可なり、大盜奪ふ所の物を我に復して、其罪を問ふは我か權のみ、世界の輿論尙し辱に屈して一國の威武を捨て猶ほ平和を口にして敗亡を俟たしむべ三十九