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島田蕃根翁と縮刷大藏経

 自分は豫て明治大正の出版文化に貢献した功労者の功績を、何等かの方法に依つて、顕彰し たいといふ念願を持つている者で、この一篇もさうした微志から執筆するといふことを、前以 て申し上げて置く。

 明治の上半期のまだ出版文化の幼稚であつた時代に、和漢の古書を蒐集して、これを活版に 附し、廣く社會に頒布した功労者としては、その筆頭に甫喜山景雄翁と、近藤瓶城翁を擧げねば ならぬ。甫喜山翁の「我自刊我書」百二十冊、近藤翁の「史籍集覧」四百六十八冊「存採叢書」百 三十三冊は、當時にあつては可成の大出版であつて、近藤翁の如きは、此がために、みづから 活版所を經營された位である。後に田口卯吉氏が經濟雑誌社を創立して、「群書類従」「國史体 系」等の大出版を爲したが、その先縦の功は、何といつてもこの兩翁に歸すべきである。然し 更に翻つて考へると、この兩翁以前に、「縮刷大藏経」の大出版を企てて立派に成功した人があ ある。それは出版元たる弘教書院の稻田佐吉、色川誠一、山内瑞圓、山東直砥、島田蕃根といつ た人々で、殊にその主唱者であり中心人物であつた島田蕃根翁の名は、忘れてはならない。


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