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用紙で、これは全部土佐國へ註文して、土佐紙を使用することになつたが、茲に至るまでに も、容易ならぬ苦心が、費やされた。最初の豫定は、一部百二十圓の豫約募集で、一千部だけ刷 る見積りであつたが、これではどうしても算盤が持てぬので、後に代價を百六十圓として、二 千五百部を印刷した。百圓以上の豫約募集といふことも、我國に於ては、この「縮刷大藏經」の出版が嚆矢であること勿論である。

 出版の準備が整ふと共に、第一に着手したのが、大藏經の校合である。これは實に難事業で あつたが、幸にして芝増上寺の福田行誡上人の諒解を得て、有名なる同寺の三大藏經(宋藏、 元藏、高麗藏)を借出すことを得た。増上寺の三大藏といへば全國に知れ渡つた山門の寶で、従 来全く?外を出さなかつたものであるが、流石に行誡上人だ。弘教書院の事業が、佛教興隆の ために益するところありとして、非常なる英断の下に、その全部を開放した。これがために、 「縮刷大藏經」は、立派な底本を得ることが出来た譯で、この點に於ける行誡上人の功德も、亦 忘れては成らない。偖て、底本の借出が纏つたので、いよいよ校合といふことになつだが、 これがまた容易でなかつた。まづ第一に困つたのは、校合に従事する人物である。苟も大藏 經の校合に當るからには、佛典に闢し、相當の智識を備へ、その取捨撰擇を謝らぬだけの素養

が必要だが、斯ういふ事業に献身的に働いてくれるさういふ人物を多数に得ることは、頗る困 難である。そこで全國の各宗寺院に檄を飛ばして、これを集めた。


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