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 婦人が主婦として家事を処理するに当り、科学的知識の必要なることはいふまでもありませんが、併し一概に科学的知識と申しましてもその範囲が頗る広汎でありますから、これを修得するに当り、如何なる種類のものが家庭生活に於て最も緊要であるかを吟味し、その選択を謝らないやうにしなければならぬと思ひます。
 
 婦人が主婦として家事を処理するに当り、科学的知識の必要なることはいふまでもありませんが、併し一概に科学的知識と申しましてもその範囲が頗る広汎でありますから、これを修得するに当り、如何なる種類のものが家庭生活に於て最も緊要であるかを吟味し、その選択を謝らないやうにしなければならぬと思ひます。
 
 吾々の家庭に於て日常用ひる物即ち衣食住の材料及び日曜の器具諸機械の殆どすべては自然科学の応用によつて製産されたものでありますが、そのとき応用せらるる科学的知識の多くは家庭に於ては左程緊要なものではありません。然らばどういふものが緊要であるかと申しますと、是等の材料はそのままでは役に立ちません、家庭に於て更に調理裁縫が必要であります。また器具器械衣服等はこれを合理的に保存し或は利用しなければ、その機能を十分に発揮せしめることが出来ません。かかる加工を有効に行ひ[#「加工を有効に行ひ」は太字]、またその機能を十分発揮せしめる[#「機能を十分発揮せしめる」は太字]には、これに関する科学的知識が必要[#「これに関する科学的知識が必要」は太字]であります。かかる知識こそは吾々が最も切実に要求するものであると思ひます。本書の収むる事項はこの方針で選択してあります。
 
 吾々の家庭に於て日常用ひる物即ち衣食住の材料及び日曜の器具諸機械の殆どすべては自然科学の応用によつて製産されたものでありますが、そのとき応用せらるる科学的知識の多くは家庭に於ては左程緊要なものではありません。然らばどういふものが緊要であるかと申しますと、是等の材料はそのままでは役に立ちません、家庭に於て更に調理裁縫が必要であります。また器具器械衣服等はこれを合理的に保存し或は利用しなければ、その機能を十分に発揮せしめることが出来ません。かかる加工を有効に行ひ[#「加工を有効に行ひ」は太字]、またその機能を十分発揮せしめる[#「機能を十分発揮せしめる」は太字]には、これに関する科学的知識が必要[#「これに関する科学的知識が必要」は太字]であります。かかる知識こそは吾々が最も切実に要求するものであると思ひます。本書の収むる事項はこの方針で選択してあります。
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 次に上述の如き事項を如何様に説明すべきかといふことであります。家事の実際に携はる人々の中には理屈は要らぬ、ただ仕方さへ分ればよいと考へられる向もあるやうでありますが、それでは物の進歩発展は望まれないかと思ひます。近世工業発達の

2014年3月29日 (土) 14:16時点における版


<trjpft> 「家庭物理学」: 前頁 | 次頁 近代デジタルライブラリーの当該頁へ <astyle><gstyle>新旧字混在</gstyle><kstyle>旧仮名</kstyle><tstyle>青空</tstyle></astyle> </trjpft> 序[#「序」は中見出し]  本書は著者が数年来宮城県助詞専門学校家政科家事専攻科生のために講義した原稿に増補修正を加へたものでありまして、吾々が日常家庭に於て経験する物理学的現象の説明[#「家庭に於て経験する物理学的現象の説明」は太字]であります。  婦人が主婦として家事を処理するに当り、科学的知識の必要なることはいふまでもありませんが、併し一概に科学的知識と申しましてもその範囲が頗る広汎でありますから、これを修得するに当り、如何なる種類のものが家庭生活に於て最も緊要であるかを吟味し、その選択を謝らないやうにしなければならぬと思ひます。  吾々の家庭に於て日常用ひる物即ち衣食住の材料及び日曜の器具諸機械の殆どすべては自然科学の応用によつて製産されたものでありますが、そのとき応用せらるる科学的知識の多くは家庭に於ては左程緊要なものではありません。然らばどういふものが緊要であるかと申しますと、是等の材料はそのままでは役に立ちません、家庭に於て更に調理裁縫が必要であります。また器具器械衣服等はこれを合理的に保存し或は利用しなければ、その機能を十分に発揮せしめることが出来ません。かかる加工を有効に行ひ[#「加工を有効に行ひ」は太字]、またその機能を十分発揮せしめる[#「機能を十分発揮せしめる」は太字]には、これに関する科学的知識が必要[#「これに関する科学的知識が必要」は太字]であります。かかる知識こそは吾々が最も切実に要求するものであると思ひます。本書の収むる事項はこの方針で選択してあります。  次に上述の如き事項を如何様に説明すべきかといふことであります。家事の実際に携はる人々の中には理屈は要らぬ、ただ仕方さへ分ればよいと考へられる向もあるやうでありますが、それでは物の進歩発展は望まれないかと思ひます。近世工業発達の