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順にて同樣の事を繰り返す事各三回、即ち射手一人にて六本計三十六本の矢を奉射するのである。この射禮は當宮獨特のもので、社傳の古式に據ってゐる。  奉射が終わつて、射手は各々、宮司の前に進んで幣を受け、又矢帳役は矢帳を宮司の閲覽に供し、茲に神事全部を畢る。  この歩射の儀の畢るを待つて、拜觀者一齋に大的をめざしておしかけ之を奪ひ合ふ、特に的の中央の千木は、古來魔除けの信仰があり、船に祀れば海難除け、家に祀れば火難除け、田畑に祀れば害蟲除の靈驗ありとの信仰があるから、的の細片までも得んものと群衆の犇き爭ふさまは、言語に絶する壯觀である。 [#2字下げ]舞樂神事[#「舞樂神事」は同行小見出し] 五月一日   舞樂神事の起原は詳かでないが、現存の國寶舞樂面の裏書に、治承・弘安に修理の銘が見えてゐるから、すでに平安末期にこの神事の行はれた事が知られ、その後一時廢絶して、神禮供御の樂のみ存續してゐたが、元祿十二年藩主の命に依つて再興せられ、その後又多少の興廢があつて、明治二十七年に復興したのが今日に及んでゐる。  當日東西樂所の前庭に、鼉太鼓《だだいこ》を据ゑ、鉾敷竿を立て並べ、海上門内廣場の中央に舞臺を設ける。その儀は先づ宮司大前に進み祝詞を奏上すれば兩樂所から鳥兜、半臂裝束の樂人左右各一人が、舞臺の北方に進み、宮司の退下を待つ。宮司は退下して舞臺の前で舞樂目録をこれに授けた後、所定の幄舍に入り、樂人も樂所に歸り、これよりいよ/\振鉾に初まり、長慶子に終る八番の舞樂が順次に奉奏されるのである。その曲目の組合せは、左の十組があつて、十年毎に反覆して奉奏せられる。

曲目
一、振鉾 桃李花 太平樂 陵王 長慶子
綾切 陪呂 落蹲
二、振鉾 甘州 春庭花 散手 長慶子
登天樂 白濱 貴徳
三、振鉾 承和樂 喜春樂 拔頭 長慶子
仁和樂 志岐手 還城樂
四、振鉾 萬歳樂 安摩(二之舞) 陵王 長慶子
延喜樂 蘇利古 納曾利
五、振鉾 賀天 五常樂 還城樂 長慶子
地久 長保樂 拔頭
六、振鉾 桃李花 胡飮酒 陵王 長慶子
登天樂 林歌 落蹲
七、振鉾 褁頭樂 央宮樂 散手 長慶子
仁和樂 新靺鞨 貴徳
八、振鉾 承和樂 春庭花 拔頭 長慶子
綾切 古鳥蘇 還城樂

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