Info:ndljp/pid/781562/15
飛騨國大野郡大名田村眞宗入寺住職 平野素藏 同國益田郡馬瀬村同宗桂林寺住職 日野厳了 美濃國本巣郡文殊邑曹洞宗成泉寺住職 古田 梵仙 越後國岩船郡平林驛同宗千眼寺住職 山本 法泉 東京築地眞宗敬覺寺住職 大江 凝玄 摂津國有馬郡三田村曹洞宗心月院住職 蘆浦 默應 備中國淺口郡柏島村天台宗福壽院住職 實相 圓隨
その後の變遷等は、今は略して申せませぬが、隨分、校合 者を得るに困難したと云ふことだけは、察して貰ひた いものです、
特に、其の校合者と云ふ者の價値は中々大したもの で、大藏経と云ふ貴い聖典を手掛けると聞いては、そ れはそれは地方寺院たちでは、非常の名誉に思はれたの でしやう、今、其一例として、臨済宗から校經委員三 名へ遣した注意書を見せましやう、
一、大藏経對校の儀は最も重任にして、軽易に非ざ る旨を體認し、専ら事業の圓成を期し、?勉従事 すべきこと
一、能く六和の德を修め、對校場規則を堅く守るべ きこと
一、若し不都合の事故これあるときは?に吾宗の慚 愧のみならず、實に一大盛時の瑕瑾なり宜しく戒 愼省慮すべき事
十四年五月 大德妙心兩本山代理 釋 薩水
此の通り、十分鄭重に戒められたもので、餘程重大な 役目であつたのです、
八、校合の順序
校合には、種々方法を考へましたが、大躰は、高麗 藏に依ることとし、即ち高麗藏を原稿として、其れに 宋藏、元藏、明藏の三藏を對照して、校訂することと し、若し増上寺の元藏が缺けて居れば淺草淺草寺の元 藏を對照して之を補ひ、又、増上寺ので缺けた處があ れば、忍澂師の校正本を以て之を補ふこととし、略ぼ 仕組は出来ましたので、まづ、一人が大きい聲で高 麗藏を讀むと、三人の人が其側で、元藏、宋藏、明藏 の三つを見て居て、「それ缺けて居る」「此方には斯様
ある」と云ふ様に、双方で相違した點を謂ひ立てる、 直に筆を執つて、原稿の麗藏の上に、其由を書き付け る、中には、長行と偈頌と違つて居るものもあれば、全 く文字の無い所もある、四本相對しても、全く解らぬ 時には、□を付けて後日の識者を待つこととし、それ でも、何ぞ、外に流布した本に、参照して見るべきも のがあつた時には、其を書き加へて、「今按」の二字を 加へ、又、全く参照すべきものもなく、而かも意義の 通り安いものは、「疑何誤」「恐當作何」と書いて後人の 爲に便利を謀りましたか、此時などには、校訂者に博 識の人がほしかつたのです、
今、當時、校合者の爲た仕事の順序を云へば、
第一業 校本刪補
第二業 句讀
第三業 麗、宋、元、明四本對校
第四業 再校
第五業 印刷對校
此の通りにしていきました、其の中、句讀のことは、
最初は、ご承知の通り、藏経には句讀がないから、其 まま印刷する積りでしたが、中頃竹川辨中と云ふ人が 増上寺に居て、「大藏経に訓點を附すべし」とか云ふ議 論を『明教新誌』に出して、大に騒がしたものですか ら、終に句讀だけ附けることになつて、まづそれだけ、 藏経が便利になつたのです、
九、編輯の順序
全躰、大藏経編輯の順序は、多くは般若經を最初に 置いたもので、般若は佛母の義なりとか云ふことから、 斯く重んじてあつたものであつたが、併し、段々工夫 して見ると、蘊益大師の『閲藏知津』は、餘程辛苦して 順序を正された結果に成つたので、大師は此の爲に二 十餘年間も刻苦勉励せられたさうであるから、今は、 其順序に依りて編輯することとし、此の順序の事は不 忍の辨天堂にて各宗の管長代理及有志者を會合して其 席に於て私か主任となりて校正の事及び部類分の事、 閲藏知津の事などを決定致しましたが、其大要は、
一、經。 二、律。 三、論。 四、秘密。
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