Info:ndljp/pid/1720139/12

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沸《に》えくりかへつてゐる鉄《てつ》のお湯《ゆ》でした。此《この》真赤《まつか》な太陽《たいやう》のやうな光《ひか》りで熔《と》けてゐる鉄《てつ》が、急《きふ》に冷《ひ》えるにつれて、其《その》光《ひか》りを破《やぶ》つて輝《かゞや》いた玉《たま》となつて生《う》まれて来《き》たのが、此《この》男《をとこ》の子《こ》でした。申《まを》し遅《おく》れましたが、此子《このこ》をとりあげた産婆《さんば》はモアツサン先生《せんせい》と申《まを》す方《かた》でした。先生《せんせい》は男《をとこ》ですから、産婆《さんば》では少《すこ》し変《へん》ですが、皆《みな》サン好《い》い名《な》を考《かんが》へて|お覧《ごらん》下《くだ》さい。

[#「此電気炉の中は強い電気で熱せられ三千度近くにもなつてゐます、棒は炭素です。炭素はコンナ高温度でも解けません。」のキャプション付きの図入る]

 生《う》まれた男《をとこ》の子《こ》は、夜間《やかん》でも、暗闇《くらやみ》でも光《ひか》るといふ位《くらゐ》、光《ひかり》が強《つよ》いのですが、其《そ》の身体《からだ》は大層《たいそう》に小《ちい》さいのです。半《はん》ミリメートル、此処《ここ》に打《う》つた句読点《くどくてん》の|。《まる》よりも小《ちい》さいのです。尤《もつと》も此後《このあと》から生《う》まれた此子《このこ》の兄弟《けうだい》には、段々《だん/″\》と大《おほ》きな子《こ》もありまして、一九〇七|年《ねん》に生《う》まれたものには二ミリ半《はん》といふのもあつたそうです。其時《そのとき》の産婆役《さんばやく》は前《まへ》とは別《べつ》の人《ひと》でしたが、やはりフランス人《じん》でありました。

 斯《か》うして、此子《このこ》の兄弟《けいだい》は幾人《いくにん》か生《う》まれましたが、どれもさほど大《おほ》きなのはありませんでした。然《しか》し此子《このこ》の親類《しんるゐ》には中々《なか/\》大《おほ》きなのもあつて小石《こいし》ほどのもありました。一九〇五|年《ねん》にアフリカで見付《みつ》け出《だ》されたものなどは恐《おそ》らくは其《その》大関《おほぜき》でせう。之《これ》を二百|万《まん》円《えん》近《ちか》くで買《か》つた人《ひと》がありました、子供《こども》に値段《ねだん》はおかしうございますネ。こんなに大《おほ》きな子供《こども》には産湯《うぶゆ》も亦《また》大《おほ》きなもので、我々《われ/\》の地球《ちきう》を産湯《うぶゆ》にして生《う》まれます。地球《ちきう》の内部《ないぶ》に深《ふか》く入《はい》つて行《ゆ》きますと、炭素《たんそ》が熔《と》けたやうになつて、種々《しゆ/\》な鉱物《くわうぶつ》の間《あひだ》に雑《まじ》り強《つよ》く押《お》されてゐるんださうです。此《この》熱《ねつ》せられ押《お》されて居《ゐ》た炭素《たんそ》が、地球《ちきう》表面《へうめん》に近《ちか》く来《き》た時《とき》に、段々《だん/\》冷《ひ》えますと、光《ひか》つた硬《かた》い玉《たま》になるのです。其《それ》をダイヤモンドとか金剛石《こんごうせき》とか申《まを》します。それで此《この》玉《たま》の兄弟《きやうだい》は地球《ちきう》の内心《ないしん》には、まだまだ幾《いく》らもかく

<trjpft> 「炭素太功記 : 理科読本」: 前頁 | 次頁 近代デジタルライブラリーの当該頁へ <astyle><gstyle>新字</gstyle><kstyle>旧仮名</kstyle><tstyle>青空</tstyle></astyle> </trjpft>